上海建築巡り

上海に行くという建築ファンの浅見さん他ご一行に便乗させていただきました。 実質2日間という余裕のない日程ですが、 案内役の方々の周到なコース選定により、 かなり濃い内容で回れたと思います。 (2003.02.06) （写真右：旧サッスーンハウスのインテリア）

【日程】
1日目
夜、空港に到着、宿泊先のホテルに向かう。 泊まったところは、14階建ての元高級アパート。落ち着いたデザインの 旧キャセイマンション（1928、パーマー＆ターナー、錦江飯店）。 いい部屋に泊まれて、幸先がよろしい。

2日目
何と言ってもバンド（外灘）に並ぶ近代建築群を見なければ、という訳だが、 まずバンドの対岸にあるテレビ塔に登り、街を一望。 渡し舟で対岸に渡ってゆくと、近代建築群が目の前に迫ってきてかっこよい。
黄浦江に沿って公園・遊歩道になっているので、ブラブラしながらまずは建物の外観を 愛でてゆく。 このあたり英米共同租界に並ぶ古典様式系の建物の多くは、 パーマー＆ターナーによるもの。 辛亥革命や第一次世界大戦あたりから上海には資本が集中してきて、 ビルも高層化が進み、英国でも流行していた列柱の並ぶ派手なバロック調の建物が多く建てられた。

その代表が中央にドームを乗せた旧香港上海銀行（1923、上海浦東発展銀行）。 少しあとに、アメリカ流のアールデコ建築が建てられるようになる。 緑色のとんがり屋根を乗せた、旧サッスーンハウス（1929、和平飯店）が代表的なもの。 また、左隣にはバロック調が流行する前に建てられた、クイーンアン風の旧パレスホテル （1906、和平飯店南楼）が１棟残っている。 従ってこれらバンドの建築群からは、20世紀初頭の建築史の動向がうかがえるであろう。 （写真左：中央にドームのある旧香港上海銀行と、時計塔のある旧上海海関=税関=） 鉄橋を渡った先にある旧リチャードホテル（浦江飯店）へ向かう。 昔ながらのインテリアが残っており、ここで昼食。 バイキング形式で安くて、満足。

また引き返して、今度はバンドの建築群を間近に拝見。 銀行は内部の撮影禁止だが、見学だけなら問題ないようである。
やはり圧巻は旧香港上海銀行で、中に入るとパンテオンのような 円形ドーム状態になっており、列柱の並ぶドームの内側には、 細かなガラスモザイクで各国の都市景観や女神像が描かれている。 豪華さにびっくり。 また、ちょっとわかりにくいが、奥の方にカフェがあり、 中庭に面したテラスでコーヒーを飲める。（寒かった...）

バンドの次はその西側の地域。少し横道に入ると次から次へと現れる近代建築の数々。 ここでもクイーンアンあり、古典主義建築あり、アールデコあり。 とにかく感心しながら歩き続ける。

デパートの並ぶにぎやかな南京東路を抜け、 アールデコ〜モダニズムの時代の建築家・ヒューデックの作品を目指す。 人民広場近くの旧パークホテル（1933、国際飯店）がアールデコ作品で、ロビーの ２階部分には、ヒューデックの紹介や代表作品のパネル展示あり。 西隣にある映画館も、同じ設計者によるもの。

日も暮れてきたので、いったんホテルに戻り、 隣にある旧フランスクラブ（1926、花園飯店）を見る。 フランス人設計で、これも中々すばらしい建物。 外観は上海にもよくある古典様式系のデザインだが、中に入ると優雅なアールデコ様式。 ２階ロビーの柱頭部分にある官能的な裸婦像のレリーフが印象的 （現在はオークラ系のホテル）。

3日目 フランス租界の洋館群を見に行く。 まずは宿泊先から程近い、旧馬勒（ミューラー）公館（1932）。 競馬で大儲けした人の建てた豪邸で、施主が 「娘の夢に出てきた洋館」を元に建てたというメルヘンチックな邸宅である。 つい最近ホテルに改装され、日本人の宿泊客が最も多いとか。 （ガイドブック類ではまだ以前の共産主義青年団上海委とか、 上海市青年連合会となっていた） お茶を飲んだり、館内をうろうろ。１階ロビーや階段部分なども 非常に手の込んだ造りになっており、濃密。 （写真右）変化に富んだ外観の旧馬勒公館 次にタクシーで興国賓館へ。 広い敷地に数棟の施設が点在するホテルで、ここの１号館が端正な古典様式の旧太古洋行ゲストハウス（1935）。 庭が広々して素晴らしい。

旧フランス租界には、質の高い洋館が数多く残っている。 記念館として公開されている宋慶齢旧居（1920）や旧蒋介石邸（現在、上海音楽学院、見学不可） 等に感心しながら、旧フランス租界参事邸（1905、工芸美術研究所）へ。 ここは展示施設として公開されており、フランス古典主義様式の美しい建物。 ２階がメインフロアで、楕円形状の階段室が見事である。
散策のしめくくりに、ここもホテルになっている洋館でお茶（1925、東湖賓館）。
日もすっかり暮れたので、ライトアップされたバンドの景色を見に行く。 これはすばらしい。
アールデコの旧サッスーンハウスはインテリアが見所。日本人向けクラブも あるが、もちろんパス。同行者はここから人民広場まで歩こう、と言うが、 腰が痛くなってきたので、ホテルに帰ることにした（情け無し）。

　バンドの夜景、かっこいい！

4日目
飛行機が午前の便なので、早々とホテルを後にする。 あぁぁ、もう少し時間があれば。

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時間の割にはずいぶんいい物件を押さえられたので、 ロンドン編とは異り(!)、他の方にも参考になると思います。 詳しいコースや見所については、今後順次更新していきます。
（じつはロンドン編も未完のままでしたが.....）

【参考】 * 以下のページも同じ。
図説 上海（村松伸、河出書房新社）　上海の概要がわかる。
地球の歩き方D02 上海 蘇州・杭州（ダイヤモンド社）　便利だが、旧フランス租界の記載がほとんどなく不満。
上海 歴史ガイドマップ（木之内誠、大修館書店）　これはすごい。街歩きで気になる建物を見つけたら、即チェックできる労作。

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